011 ミエナイプレッシャー
山崎良プロフィール
 先日、東京芸術劇場大ホールにて「ダージュ オブ ケルベロス -ファイナルファンタジーVII-」のフルオーケストラレコーディングが行われました。ホールを丸ごと借りきって80人以上の大編成の生演奏を録音してしまおうという訳です。今までオケ録音は何度か見る機会があったのですが、ここまでの大規模なものは初めてです!

 通常ムービー映像に曲を合わせる場合、通称「ドンカマ」(※1)と呼ばれるクリック音を指揮者と演奏者が聴きながらそのテンポに合わせて演奏します。メトロノームのようなものですね。つまりドンカマのテンポが絶対であり、どんなに良い演奏をしてもこれとズレてしまったらNGなのです。

 このドンカマを作るのが今回の自分の大事な役目の一つです。データがムービーにちゃんとシンクロしているか、テンポが急に変わるところで演奏者はついてこれるかなどを気にしながら慎重に作っていきます。

 譜面の表記とデータにズレが無いかを確認し最後にもう一度浜渦氏と2人で通しチェック。最悪の事態も想定してバックアップや予備機材も用意しました。あー、でもまだ心配。念のためiPodにも予備データを入れとこ(ちっちぇーなオレ...)。それでももしこのドンカマにトラブルがあったとしたら録音の進行全てが止まってしまうのでプレッシャーも半端じゃないです。



 当日は準備の為少し早めに楽屋入り。挨拶を済ませホールの外に留めてある機材車のところへ行ってみると...。

 うぉっ、でかい!そこには巨大な中継車がっ!

 中に入るとコンソール卓やスピーカーセットなどの機材がビッシリ詰め込まれた簡易スタジオがドンと控えております。これホントにバスの中なの?と疑いたくなるほど。

 おぉ、SSL(※2)の卓だ。きれいなツマミだな〜と摘みたい衝動を抑えながら w、さ、準備準備。持って来たドンカマのデータをエンジニアさんに引き渡しチェックしてもらい、どうやらデータは問題ないとのことなので一安心。今度はマイクや楽器の位置を見にホールへ移動。

 ステージ頭上に天井から吊るされたマイクと、アンビエンス用として客席側にも同様に吊るされたマイクが見えます。と同時に各楽器の近くにもそれぞれのマイクが合計50本近くありますね。すごい...。

 そうこうしてる間に演奏者の方々がどんどん入ってきて、リハーサル準備を始めています。皆様本日はよろしくお願いしま〜す。今回演奏して頂くのは「東京フィルハーモニー交響楽団」の皆様です。日本でも屈指のオーケストラ楽団の演奏を生で聴けるのですからこの上ない贅沢です!とはいっても自分はホールではなくずっとバスの中なのですが...(泣



 サウンドチェックも終了し、いよいよ本番スタート。出音を聴いた瞬間、全身の毛がゾワッと逆立つのを感じました。ものすごい迫力です!スタジオとホールでの一番の違いはなんといっても広さです。ホールに反響する豊かな響きを含めた演奏こそがホール録音の醍醐味ですね。いや〜良いです。マジで泣けます。

 バスの中のテレビモニターにはステージと観客席の様子が映し出されています。スタッフの方と何やらボソボソ打ち合わせをしている浜渦氏を発見w いいなー、あんな特等席で聴けて...なんて思っていたら意外にもバスの中の方が各楽器の音量バランスがきれいに聞こえるとのこと。

 自分の打ち込んだクリック音に合わせて指揮者の手が動き、それに合わせて演奏される曲を聴いていると、あたかも自分が指揮棒を振っているかのような錯覚に陥ってしまいます w

 アップテンポな上に途中で拍子がめまぐるしく変わる曲もあり、タイミングが合うか心配していたのですが、意外とあっさり終わったので取り越し苦労でした。さすがは東フィルさんです。

 収録は特に大きなトラブルもなく無事終了。予定していた時間より20分ほど早く終わり、とてもスムーズな進行でした。




 東フィルさんの巨大トレーラーが撤収作業を始めています。あれを全部バラして搬送するってかなり大変そう...。

 何はともあれ無事終わって良かったです。東フィルの演奏者の皆様、レコーディングスタッフの方々、本当にお疲れさまでした。浜渦氏も良い演奏が録れてかなり満足しつつも、さすがにグッタリ w

後はゲーム本編の曲を仕上げねば。それにしても凄いゲームになりそう...。


※1 コルグ社の「ドンカマチック」というシンセが同期録音のガイドとしてよく使用されていたことから来ているそうです。
※2 SolidStateLogic社。プロ用のオーディオコンソールメーカー。

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